2003年 8月24日(日)
ファム・ファタール

僕の親の家では、台所にパソコンが置いてあります。
以前僕が使っていたDELLの古いワークステーションなのですが、ADSLでインターネットに繋いであって、料理のレシピなんかが簡単に見られるので、とても便利です。
台所とパソコンという組み合わせは、活用できる範囲が広くておもしろいですね。

我家の女性陣にとって、もうひとつ便利なのはネットオークションで、僕の母親と奥さんとで液晶画面を見ながら、ああでもないこうでもないと楽しそうに話しています。
僕の母親が気に入ったものがあれば、すぐに奥さんが入札するわけです。

それでわかったのですが、年寄り向けの洋服やバッグといったブランド品は、けっこう狙い目ですね。
その世代でインターネットを活用している人が少ないので、値段がつりあがらないんです。
先日も有名なブランドのブラウス(もちろん新品)を定価の10分の1くらいの価格で落札していました。



日比谷の映画館にブライアン・デ・パルマ監督の「ファム・ファタール」を見に行きました。
僕の大好きなデ・パルマ監督の待望の新作です。

ラジオを聞いていたら、この作品を見た人が「デ・パルマも老いたか」と酷評していました。
それで少し心配していたのですが、何しろ僕はデ・パルマが大好きなので、劇場ではじゅうぶんに楽しめました(笑)

デ・パルマの作品群には駄作も多く混ざっており、そういう意味ではこの作品の出来も「ほどほど」なのですが、もともとこの監督の作品はストーリーを追うというタイプのものではなくて、官能的かつショッキングな映像で観客を酔わせるというタイプのものです。
また、見ている人の気持ちや感情をコントロールし、好きなように振り回すのもデ・パルマ作品の特徴で、観客が翻弄されている様子を見て、デ・パルマ監督がニヤニヤと笑っているのが見えるようでした。

作品の(特にストーリーの)完成度は高くないように感じましたが、過剰なエロチシズム、不自然な物語の展開、いきなり加えられるショック、息の詰まるような緊迫感・・・そういったデ・パルマ作品ならでの持ち味は十分に発揮されています。
それだけ見せていただければ僕はもうお腹一杯です(笑)
見終わった後、もう一回見たいなと思う希有な作品でした。

でもそれは僕がデ・パルマの大ファンだからで、一般の人はどうなのでしょうか?
奥さんの評価が気になって聞いてみたのですが、意外にも結構気に入ったようで、「おもしろかった」と言っています。
何よりもヒロインの悪女を演じたモデル出身のレベッカ・ローミン=ステイモスのボディが一番気になったようで、贅肉のまったくない凄い体だとさかんに感心していました。
そういうことは女性の方が敏感に感じ取るのでしょうね。
(僕はただのスタイルのいいネーチャンだとしか思っていませんでした・笑)
「この映画は、女性なら気に入ると思う」というのが奥さんの評価でした。

観客の入りはまあまあで、空席もあったのですが、劇場そのものがとても大きかったので、人数は結構入っていると思います。
おもしろかったのは何故か年配のお客さんが多かったことで、デ・パルマの大胆なストーリー展開についていけず訳がわからなかった人もいたようで、映画が終わった後、奥さんに事細かに内容を解説している旦那さんがいました(笑)


そうそう、帰りに近くの日比谷シャンテの地下2階にあるリストランテ・フレスコというヴェネチア料理のお店で昼食を取ったのですが、ここは値段もほどほどでおいしくておすすめです。(↓写真)
日比谷シャンテはけっこうおもしろいお店が揃っているようですね。




それから秋葉原に行ってコイズミ無線でスピーカーユニットを買いました。
BBCモニターのLS3/5Aのユニットです。
いつか買おうとは思っていたのですが、雑誌に残数僅少というようなことが書いてあったので、あわてて買いに行ったのです。

知らない方のために書いておくと、LS3/5Aとは英国のBBCで音声モニター用に使われている(使われていた?)傑作スピーカーで、世界中にファンが大勢います。
BBCの指定する部品を使用し、設計通りの箱を製造し、さらに許可さえ得られれば、どこのメーカーが作っても「LS3/5A」と名乗れるわけで、実際に過去に数社から発売されていました。

ウチでも奥さんがロジャース社製のLS3/5Aを使っており、その音は僕が聞いても感心するほど見事なものです。
特に人の声の再生が傑出していますね。
小さいスピーカーなのですが、優れた音で鳴らすのはなかなか難しくて、電源部のしっかりした中級クラス以上のアンプでドライブしないと本来の実力を発揮しません。

僕も常々自分オリジナルのLS3/5Aを作ってみたいと思っていたので、今回思い立って部品を確保したわけです。
僕の他にも雑誌の記事を読んであわてた人がいたようで、僕の次にお店に来たお客さんも同じものを買っていました。

ま、売り切れたら海外から個人輸入で取り寄せればいいだけなのですが・・・

2003年 8月20日(水)
那須でみつけた食べ物

お盆においしいものを食べ過ぎて体調を崩してしまいました。
少し油っぽい食べ物を控えて、体調を整えようと思っています。
そこで今日の夕飯はシンプルに、ご飯とネギのお味噌汁、じゃがいもの煮物に生のキュウリとトマトにしてもらいました。

でも実は凄く贅沢なんです。
ご飯は奥さんの実家で特別に作った天日干しのお米(コンクールで賞を取ったそうです)。
ご飯にのせたおかずは前述の山一醤油店秘伝の「あけがらし」(これほんまに美味い!)。
味噌汁のネギは実家で特別に作った(数回植えなおした)くさみのまったくない長ネギ、味噌はもちろん山一製。
じゃがいもとキュウリとトマトは実家で畑から取ってきた特別製。キュウリにはこれまた山一のお味噌を付けて食べました。

ヘヘ・・・贅沢でしょ(笑)



ちょっと食傷気味で先日は書く気を無くしていたのですが、お盆休みに例によって那須に寄って、いくつかお土産を買いました。
那須は探せばけっこうおもしろいお店があるんです。玉石混淆ではありますが・・・

上は有名なドリームというパン屋さんで、最近何かと話題のお店です。
なぜ有名かというと、皇太子様をはじめ、皇室の方々がここのパンを好んで食べられる、ということで有名なのですね。すぐ近くが御用邸なんです。

たしか下の左側のパンが、愛子様がお好きなパンです。
右側のはアンパンなのですが、凄い量のアンコが入っていて、ずっしりと重いので有名です。
パンというよりアンコのかたまりにパンの皮を付けたような食べ物です。

  

ここのパンは実際においしいので、よく買って帰るのですが、最近は有名になってしまい、お客さんでごったがえしていて、車を駐車させるのも一苦労です。
ドリームはパン屋さんの下が凝ったコーヒーを飲ませるお店になっていて、上のお店で買ったパンを食べながらコーヒーを飲める、という仕組みになっています。

那須街道から細い道を左に入った奥のほうにあります。
ちょっとわかりにくい場所かもしれません。
HPはここですね>  http://www.pan-dream.com/


   

もうひとつ、那須街道の上のほうにある扇屋というお菓子屋さんで、「那須御用邸献上饅頭」なるものを発見。専用の展示ケースに入れられて、他の商品とは別格の扱いを受けています。
このお饅頭は昭和天皇の御所望で献上していたのだそうです。
値段は8個で2,000円・・・よく考えたらそんなに高くないですね(笑)

凄く凝った箱に入っていて、1個1個丁寧に包まれています。
梱包代もかなりかかっていますね。
味はモチモチした上品なもので、まあまあでした。
皇室好きの方はどうぞ(笑)
このお店では「みそきん」というお饅頭もおいしくて有名です。


那須は御用邸がある関係で、歓楽街を作ってはいけない、等の規制があるそうです。
これは那須町の清潔なイメージを作り上げる上で役に立っているような気がします。
地元の人は遊ぶ時は隣の黒磯市まで行くようです(笑)

2003年 8月17日(日)
ベアーズ・キス

話題の映画「ベアーズ・キス」を渋谷に見に行きました。
お客の入りは3〜4割で空席が目立ちます。(隣の映画館では「パイレーツ・オブ・・・」を上映していましたが、そちらは立ち見でした)
けっこうTVで宣伝しているようなので、ペイできるのだろうか?と心配になりました。

この映画は評価がすごく難しいです。
僕もどう評価していいものか、まだ決めかねています(笑)

「不思議な」映画ではありますが、だからと言ってファンタジーと呼ぶには悲しさと生々しさが強すぎます。
劇場には映画にちなんで作られたテディベアが展示されていましたが、これはそういう類の作品ではありません。「カワイイー」と喜んで見る作品ではないのです。

ハリウッド的な文法で作られた作品ではないので、僕もそういう感覚で見るよう努めましたが、なるべく感受性を豊かにしながら見ても、演出上粗っぽいところがあって、凄く出来の良い作品とは言えないように思えました。
サーカスに勤める人たちの明日をも知れぬ生活の悲しさはひしひしと伝わってきますし、人間の世界に幸福を見つけられない不幸な少女の身上も伝わってきて、決して悪い作品ではないのですが・・・

よほど自分は映画通であると自称する人ならともかく、一般の人がお金を払ってまでして無理に劇場で見る作品ではないかもしれませんね。
どうしても見たいなら後でレンタルで見る程度で十分です。
僕も学生時代はこの手の映画を通(つう)ぶってずいぶん見ましたが、もともと根が単純なので見るのが億劫になり、今はあまり見たいと思わなくなりました。

映画が終わった後の観客の反応が面白かったです。
みんな困惑して無言になってしまい、帰りの廊下でもエレベーターの中でも誰も話そうとしないんです。
皆さんどう評価していいかわからなくて、困っているようでした(笑)

奥さんの評価は「ノーコメント。隣の映画館でジョニー・デップをもう一度見た方が良かったかもしれない」という厳しいものでした(笑)


そうそう、渋谷に行ったついでに、東急文化会館がどうなったか見てきました。
まだ建物は建っていますが、シャッターは閉まっていて映画館の看板はすべて取り外されていました。
下が「今日の」東急文化会館です。

2003年 8月16日(土)
お盆休み

お盆休みを利用して、磐梯熱海の温泉へ避暑に出掛けてきました。
毎年行っている行きつけの旅館です。

雨ばかりでしたね(笑)
その上寒い。
何のために避暑地に行くのかわかりませんでした(泣)




まずは例によって食べ物の話題で申し訳ありません。
山形県の米沢市まで足を伸ばして、「吉亭」という料亭(上の写真)で昼食をとりました。

ここは米沢牛を使った料理で有名なお店なのだそうです。
いっしょに行った叔父の大学時代の先輩のお店で、極上の米沢牛のお肉を使った料理をいただく事ができました。

   

いやー、すばらしいお肉でした(笑)
口の中でお肉がとろけるんです。
しゃぶしゃぶとすき焼きをいただいたのですが、どちらも口に入れるとお肉がすーっと溶けて、どこかに消えていくような食感です。、

いつも思うのですが、米沢牛とか松坂牛とか有名な牛肉はいくつもありますが、実際に現地でいただくお肉というのは、東京で食べるものとは味がぜんぜん違いますね。
ついついおかわりして食べ過ぎてしまいました。

今でこそ米沢牛は有名ですが、ここのご主人が頑張られてここまでにした、という経緯があるんだそうです。
地元に天才的な牛飼いがいたのが幸いした、と言われていました。

http://www.yoshitei.co.jp/

↑ここが吉亭のHPですね。
息子さんが頑張られておられるそうです。




以前日記で何度か紹介したことがありますが、イギリス人の女性旅行家イザベラ・バードの「日本奥地紀行」という旅行記があります。
明治11年に東京から北海道にかけて旅し、現地の様子を細かく描写した、非常に貴重で興味深い旅行記です。

その本の中で、バードたち一行が美しい米沢平野にさしかかった時、作物が非常に豊富で、人びとがのびのびと収穫している姿を見て、「アジアのアルカディア(桃源郷)」という賞賛の言葉を旅行記に記しました。

以下に平凡社刊の「日本奥地紀行」(イザベラ・バード著・高梨健吉訳)から一説を引用してみましょう。

「米沢平野は、南に繁栄する米沢の町があり、北には湯治客の多い温泉場の赤湯があり、まったくエデンの園である。「鋤で耕したというより鉛筆で描いたように」美しい。米、綿、とうもろこし、煙草、麻、藍、大豆、茄子、くるみ、水瓜、きゅうり、柿、杏、ざくろを豊富に栽培している。実り豊かに微笑する大地であり、アジアのアルカデア(桃源郷)である。自力で栄えるこの豊沃な大地は、すべて、それを耕作している人々の所有するところのものである。彼らは、葡萄、いちじく、ざくろの木の下に住み、圧迫のない自由な暮らしをしている。これは圧政に苦しむアジアでは珍しい現象である。」


今回の僕の旅行には、その「アジアの桃源郷」と褒め称えられたほどの土地をこの目で見てみたいという目的がありました。
バードの絶賛した場所は、現在の山形県南陽市のあたりだそうで、これを記念して南陽市の「ハイジアパーク南陽」という施設の中に、イザベラ・バード記念コーナーが設置されています。

  

イザベラ・バード記念コーナーは「ハイジアパーク南陽」の中の片隅に設置されています。
写真ではなかなか立派に見えますが、実際には階段の陰の壁際にあるひっそりとした展示コーナーに過ぎません。
展示されている物は、バードの直筆の書簡(下の写真)が数点と、あとはバードがたどったと思われるルートの地図、バードの出版物、当時(ビクトリア朝時代)の服装(バードの着ていたものではない)程度です。

  

上はバードの写真と直筆の手紙です。
見るべきものはこれくらいで、後ははっきり言ってたいしたものではありません。
展示物だけで考えるなら、那須の戦争博物館の方が立派ですね(笑)
僕が自分のコレクションを陳列して「ガンベルト博物館」を作ったら、もっと立派なものができるでしょう。


僕はこの「ハイジアパーク南陽」という施設にかなり失望しました。
ここは今流行っているスーパー銭湯というやつの一種で、大衆浴場とプール、宴会場等の総合施設です。

施設そのものを批判する気はないのですが、イザベラ・バードとはあまりにミスマッチです。
履物を脱いで裸足になって展示物を見なければならず、見ている間も横で浴衣を着た人や子供たちがワイワイと歩き回っています。
演歌歌手が来てショーを開くらしく、宴会場から洩れてくる演歌をバックミュージックに展示物を見学するはめとなりました。

閉口しながらも、しばらく展示物を見学していましたが、その間僕たち以外で展示物に興味を示す人は唯の一人もいませんでした。


上の写真がその「ハイジアパーク南陽」です。
どうせならもう少し違った趣の場所に展示コーナーを設置できなかったのでしょうか?
図書館とか、もっとふさわしい場所があったはずです。
この場所を選んだ人たちはほんとうに「日本奥地紀行」を読んでいるのでしょうか?
ウチの奥さんは「バードがかわいそうだ」と言って怒っていました。

展示物も少々貧弱ですね。
「アジアの桃源郷」とまでの絶賛の評価を得たほどの土地なのですから、そのことを大切にして、もっと充実した誇れる展示コーナーにしてほしいものです。


おそらくバードは険しい山々を踏破した後、急に目の前にこの平野が広がり、天候にも恵まれそれがとても美しく映ったのでしょう。そこの人々の暮らしは理想的なコミュニティに見えたのだと思います。

「ハイジアパーク南陽」に失望した後、せめてその美しい光景の片鱗でも見られないものかと思い、付近の小山に登ってみました。
すると平野が一望に見渡せる場所がありました。


天気に恵まれなかったので(あと僕の写真の腕が伴わないため・笑)、たいして美しい写真ではありませんが、実際にはここはなかなかの景観で、思わず見とれてしまいました。

歩くのも困難なほど急な斜面を、葡萄畑が埋め尽くしています。ここはワインの生産地としても有名なんですね。
天気のいい日に鮮やかな緑に覆われたこの平野が目の前に展開したら、さぞやきれいなことだろうと思いました。




当てもなく車を走らせているうちに、山形県長井市という場所まで来てしまいました。
夕食の時間までに福島県の旅館まで帰らなくてはならないので、ちょっと遠出しすぎてしまったようです。

コンビニでこの地方のガイドブックを購入したら、「山一」という醤油、味噌の醸造蔵が載っていました。
そこでは古くからの伝統を守った製法で作っているそうで、なかなか面白そうなので行ってみることにしました。


ご覧の通り小さい醤油屋さんですが、この偶然の訪問が、今回の旅行の中ではもっとも印象に残る体験となりました。
お店の裏は醤油、味噌を作る作業場である古い建物が、ずっと奥まで続いています。
古い町にはこういう細長い作りの建物が多いですよね。


たまたま若い9代目がおられて、奥の作業場を案内してくださいました。
これはそうとうおもしろい経験でした。

下の写真のように建物は古く、中には年季の入った機械や瓶が並んでいます。何と一番新しい機械でも40年前に導入したものなのだそうです。

長井市は、江戸中期に最上川の舟運が盛んになるのと同時に、米沢市の表玄関として栄えた都市です。
このお店のように、山から最上川に注がれる清水を利用した商売も栄えました。

  

これは熟成させている最中の醤油の槽です。
はしごがかかっていて、それを登って中を覗き込んで撮った写真です。
表面は水泡がいっぱいです。
耳をすませてみると、ブクブクと発酵する音がかすかに聞こえてきます。


何と建物の中を川が横切っています。
かつては数mの深さに掘られており、瓶をここで洗浄したそうです。

今でも魚が泳いでいて、人の影に驚いた数尾のハヤが水面下を逃げていきました。たまにイワナやヤマメもくるそうです。

この市の生活は川と深い結びつきがあるんですね。


奥の密閉された部屋には熟成させている最中の味噌の樽がいっぱい並んでいます。
真っ暗な部屋の中を電球をつけて案内していただきました。

完全に昔の製法を守った手作りなので、たまに樽の木片が入っていることがあるそうですが、それは勘弁してください、とのことでした(笑)
かえって期待できるエピソードですね。


「山一」では伝統的な天然醸造の味噌や醤油を作っています。
日本中の有名な料亭が隠し味として使っているそうです。
今回は自慢の味噌や「本かえし」という三年熟成の醤油などを購入しました。

おもしろいのは(頑固な?)蔵頭の許可が出たものでないと出荷できないということで、今は蔵頭がお盆休みなのでその場で購入できないものがあり、それは許可が出てから宅配便で送ってもらうことにしました。

味噌と醤油は大変すっきりとした高品位な味です。
味噌汁を作ったら、一般の家庭料理の重々しい味ではなく、高級な料亭などで出るさらりとしたいわゆるプロの味が楽しめました。

また「本かえし」の方も、一見濃厚なようですが、口に入れてみると実にすっきりとした上品な味です。
これは東京の有名な蕎麦屋さんでも使っているものだそうで、これを使ってそばつゆを作ると、お店で出るあの味になるそうです。


またここの売りのひとつが上の写真の「あけがらし」です。

これはこのお店の一族秘伝の辛子こうじで、江戸時代から代々一家の女性にのみ製法が伝えられてきた門外不出の「隠し味」的食材です。
NHKが調べたところ、最初は遣唐使が北九州に持ち込んだもののようですが、現在では日本で唯一「山一」のみが作っているようです。

少しぴりっとした強めの味で、そのまま熱いご飯にかけたり、冷奴やふろふき大根などにかけてもおいしいです。
時間が経つとだんだんと辛さが減退し、かわりにこうじから出た甘みが出てくるそうですが、京都の料亭などでは、辛いと料理の味を支配してしまうので、わざわざ時間を置いて甘くなるのを待ってから使うところもあるそうです。

この「山一」もしっかりHPを持っています。
若い九代目が自分で作られているそうです。

http://homepage1.nifty.com/akegarashi/

これは前述の「吉亭」のご主人が言われていたことですが、若手はインターネットなどのメディアを積極的に使って、その一方で街のあちこちに宣伝のために立てていた看板などは全部撤去してしまったそうです。「商売の仕方が変わってきたんですねえ」としみじみと言われていました。


今回の旅行は他にもいくつか書きたいことがあるのですが、長くなってしまうので、今日はここでやめておきましょう。

2003年 8月13日(水)
「グロリア」

お盆休みが始まりましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか?
僕の部屋には、窓から涼しい風が吹き込んできて、とても過ごしやすいです。
夏だと言うのに・・・・
この後、避暑地に出かける予定なのですが、家にいた方がよっぽど避暑になるかも(笑)


先日ジョン・カサベテス監督の「グロリア」のビデオを見ました。
1980年の作品なので、今から四半世紀も前の作品ですね。
なぜ今更・・・と言われるかもしれませんが、これにはちょっと理由があります。

昨年見に行った傑作映画「ダーク・ブルー」のパンフレットに、宮崎駿氏と鈴木敏夫氏の対談が載っていました。
その対談の中で、「いい映画とはどういうものか?」という質問に対し、宮崎氏が「グロリア」について触れている部分がありました。

この映画は、組織を裏切ったために一家全員を惨殺され、唯一人生き残ったプエルトリコの少年フィルと、少年を預かる羽目になってしまったギャングの元情婦グロリアとの逃避行を描いたものです。
B級作品ながら大変評価され、80年度ベネチア国際映画祭のグランプリと主演女優賞を受賞しています。(その後作られたシャロン・ストーン主演のリメイクの方は評判悪いです・笑)

宮崎氏が問題にしたのはこの映画のラストで、追っ手から逃げ切った二人が墓地で抱き合うシーンです。
ここは観客がほっとさせられるハッピーエンドのシーンなのですが、そういう見方には誤りがあると宮崎氏は言います。

これは宮崎氏も自分の塾の塾生から指摘されてわかった事なのですが、実はグロリアとフィルの二人は組織から逃げ切れずに殺されていて、ラストシーンではそこが既に死後の世界であることを暗示させる手がかりがいくつも隠されていると言うのです。
指摘されてから再度映画を見た氏も、なるほど二人は確実に死んでいると言い切っています。

昔見てハッピーエンドという印象を持っていた僕は、それを読んで驚いてしまい、これはもう一度見直さなければ、と思っていました。
ところが「グロリア」のDVDは出ていなくて、ビデオも既に廃番なのか市場では見かけません。
ネットで検索してみてもシャロン・ストーンの方ばかりが引っかかってきます(笑)
今回やっと中古のビデオが手に入ったので、早速見直してみたわけです。


ネット上の「グロリア」の評価を読んでみると、多くはジーナ・ローランズのカッコよさに惚れたということと、ハッピーエンドのラストにほっとしたというコメントばかりです。

実はアメリカではハッピーエンドにしないと、スポンサーと観客が許してくれないようなのです。
アメリカ映画は実際の生活とかけはなれた夢の世界ばかりを追い求めている、という批判をする人がいますが、そういう一面があるのかもしれませんね。
つまりグロリアも一見ハッピーエンド風にした、ということかもしれません。

「グロリア」は予算をかけずにオール・ロケで撮影したことが効いていて、アメリカの貧しい生活の描写がリアルで、街の雰囲気や香りがひしひしと伝わってきます。
敵から四六時中追いかけられ、常に監視されているという緊張感の伝わり方も見事で、街中でグロリアが四方に丹念に目を光らせる場面の描写が傑出しています。

ジ−ナ・ローランズの演技はさすがに凄くて、女性の多くが「あれこそ理想の女性像」と言っているのが理解できます。
しかし多くの人がこの映画のことを「子供のかわいさに母性愛に目覚めた主人公が、組織を裏切り命を賭けて戦う映画」と理解しているようなのですが、僕はそうは感じませんでした。

グロリアは組織の中で一目置かれるほどの存在でしたが、それでも自分の運命を「やがては野垂れ死にするしかない」と認識している女性です。
親友の子供を預かった時に、彼女は運命の時がやってきたことを知るのです。
だからこそ自分が属していた組織に対して強烈に牙をむいて子供を助けようとする。
そして絶望的な逃避行へと旅立つのです。

驚くべきはグロリアの決断力と行動力で、特に銃を抜くタイミングは一般の人よりかなり早い。
これは(自分もその一員であった)ギャング達の行動パターンを十分に知っているからで、彼らが発した言葉や雰囲気から、次に何をしようとしているのかを瞬時に判断するからです。
殺される前に殺す、危険を察知した瞬間に迷うことなく銃をぶっ放す。そんな肝っ玉の据わったグロリアの大胆な行動に、組織の男たちは出鼻をくじかれてあわてふためきます。

さて問題のラストシーンですが、この映画はラストが近くなったところで、急に流れが不自然になります。
それまでの滑らかな物語の展開が消え、子供の意味ありげな行動をカメラがずっと追いかけます。
それは妙な違和感と不思議な印象を与えて、製作者が何かを伝えようとしているのを観客に感じさせるのです。

特に、これは宮崎氏が指摘していることなのですが、ラストで出てくる二台の車にナンバープレートが無い、ということが最大のポイントです。
タクシーの前部が大写しになるシーンがあるのですが、多くの観客は子供の動きの方に気が行ってしまい、そこにナンバープレートがないことには気づかないかもしれません。
さらには理解できないグロリアの登場の仕方・・・
つまり既にこの世の出来事ではない、ということなのでしょう。

ウーン、ボケッと見ていたらだめですね、こういう映画は。
「グロリア」はいろいろな意味でB級作品なのですが、ジーナ・ローランズの強烈な印象と、二人の切ない逃避行が、見終わった後何日も心に残る不思議な魅力を持った作品です。

2003年 8月10日(日)
「パイレーツ・オブ・カリビアン」
「ブラッド・ワーク」


台風一過で晴れ渡った暑い夏の一日でした。

外は目が痛いほどの明るさで、見上げると気が引けてしまうほどの青一色の空。
めまいがするような日差しの中を、銀座に映画を観にでかけてきました。

やっぱり夏はこうじゃなくちゃね。


「パイレーツ・オブ・カリビアン」というディズニー映画を見ました。
公開中の作品の中では伏兵的な存在ながら、予想外に面白いという評判の映画です。

ディズニー映画だからとあまり期待しないで見に行きましたが、かえってそれが正解だったようです。
この映画は「最高」というほどの作品ではないのですが、その程度の気軽な気持ちで鑑賞すると、実はけっこう面白くて得したような気分になれます。

作品の質が上がったのは、ほとんどジョニー・デップひとりの功績でしょう。
もともとがディズニー映画ですから対象年齢が低く設定されていて、シナリオが妙に甘ったるくて善人ばかりでてくる作品なのですが、そこにジョニー・デップの持ち前の「狂気」が加わることで、作品にそれなりの深みが出てきたように感じました。
デップ以外の出演者も、配役そのものは悪くないのですが、それぞれの役にまとまりすぎるきらいがあり、それをデップの強い個性がうまく崩してくれたようです。

ウチの奥さんはこの作品を見てジョニー・デップのファンになってしまったようです。(それはそれで変わってる?・笑)
気楽に見る分にはおすすめの映画です。


で、夜は夜で、イーストウッドの「ブラッド・ワーク」のDVDを自宅のホームシアターで見ました。

本当は一日に複数の作品を見てはいけない、という教えがあるのですが、今日は久々にそれに背いてしまいました。
確かに1日に複数の作品を見ると、1本毎に受ける印象が散漫になり、見た後でゆっくりかみ砕く時間も取れなくなるため、作品に対する正当な評価が下せなくなります。

この「ブラッド・ワーク」という作品は、短期間の公開だったため劇場で見ることができず、僕は今日はじめて見ました。
ご存知の通り、僕はイーストウッドが大好きなので、見るのを楽しみにしていた作品です。それで我慢できなくなって今日見てしまったんですね。

イーストウッドの監督作品は、独特の「渋み」と「禁欲的な盛り上がり」とでも呼ぶべきものがあって、彼のことをよく知っている人以外には、その良さが理解できない面があります。
かなりの通好みといえるでしょう。
多くの人は「地味でまあまあの作品」程度にしか感じないのではないでしょうか?

しかし、イーストウッドのことが好きで長年彼の作品を見てきた人には、たまらない魅力があります。
イーストウッド自身がジョン・ヒューストン監督を理想の監督としている人ですから、もうこれは一般人の理解を超えた境地に達していますね(笑)
そういえばこの作品にも娘のアンジェリカ・ヒューストンが出ていて嬉しくなりました。

作品の方は、僕はかなり楽しめましたが、一般的にいってもなかなか優れた佳作だと思います。
イーストウッドもかなりの高齢なので、自分が主演もこなすとなると、必然的にハアハア言いながら必死になって駆けずり回る映画になってしまい、見ていて痛々しく感じる人もいるかもしれません。
そこがまたいいんですが(笑)


ところで今日は、銀座の映画館(ピカデリー)で見た後、自宅のホームシアターで見たわけですが、正直言って自宅の方が色々な意味で良かったです。
画質はほぼ互角、音質は自宅の方が圧倒的に上、価格もたいして変わらず(レンタルなら自宅の勝ち)、好きな時にいつでも、のんびり見られる点でも自宅が上・・・

TVのブラウン管時代と違ってホームシアターのスクリーンだと、映画を見た後に感じる「充実感」でも映画館にひけをとりません。
となるとトータルでホームシアターの方に軍配が上がりますね。
昔レーザーディスクが発売されたばかりの頃のことを考えると、今ははるかに贅沢な環境を手に入れられるのかもしれませんね。

2003年 8月4日(月)
オイモです

突然ですが、徳島県からサツマイモを取り寄せました。
今がシーズンの有名な鳴門金時です。

以前仕事で徳島に行った時に、海沿いにあるお土産屋さんで買って帰ったのですが、それが美味しかったのを思い出して、そのお店から取り寄せてみたのです。
奥さんがいろいろ調理してくれますが、やっぱり美味しいですね。

本当はもっと形のいいものを撮れば良かったのですが、もう全部食べちゃったので、この2個しか残っていなかったんです。ごめんなさい(笑)

2003年 8月3日(日)
まずは最近読んだ本の紹介から

8月になりましたね。
やっと梅雨が明けたようですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
僕? 僕は相変わらずですね(笑)

今は日曜の午後、例によって真空管アンプでJ−Waveを聞いています。
今日はせっかくの日曜なので、これからどこかに出掛けてくるかもしれません。

ところで今「梅雨」という言葉で、高校生の時に覚えさせられた次のような英語の一節を、ふと思い出しました。
We have thunder which tells us that the "Tsuyu" has ended.
こんなものを条件反射的に思い出してしまうのも何だか悲しいですね(笑)

そういえば今年は局地的に強烈な雷雨があったようですね。
落雷時のショックで機械をやられた会社も多かったようです。
みなさんのお宅や会社は大丈夫でしたか?



最近読んだ本をあげてみましょう。

これはBMW Magazineなる本です。忘れた頃にポロッとBMWから送られてきます。
当然中身はBMWに関連した記事ばかりなので、BMWに興味のない方にはおもしろくない本と思われがちですが、実際には相当知的な階層を対象とした読み応えのある記事が揃っています。

まあ、僕は3シリーズを愛して止まない人間なので、僕にとってはかなりおもしろい本です。(もっとも3シリーズは好きですが、他のシリーズはそうでもありません・爆)

BMWという会社はすごい会社で、初めて3シリーズを買ったときには、「あなたはBMWを購入した特別な人なのです」と言わんばかりの(と言うか実際にそう書いてある)ガイドブックとぶ厚いオプションカタログを送ってきました。そういう戦略の会社なんですね。基本的には車好きのエンスーという少数のユーザーを対象としている会社です。


さて、これは2003年の2号(実はもう1ヶ月くらい前に届いていました)なのですが、この号を読んでいて気になる記事がありました。
それは篠田正浩監督の映画「スパイ・ゾルゲ」に関連して、漫画家の池田理代子さんが書かれた約1ページの短い文章です。

その中で池田さんは「共産主義体制」について触れています。
内容を要約すると以下のようになります。

共産主義体制が、現実に次々と独裁的暴君を生み出すという欠陥を持つ体制であることは十分に理解しているし、人間が運用するする以上完全な平等など存在し得ないこともよく分かっているが、それでもこの体制が正しく実践された場合には人類に完全な平等をもたらすはずだとの理想を抱いている。世界中で知的エリートがこの体制にシンパシーを抱き、人類にとっての理想を見出したことは特筆に価する。

このように共産主義を支持するような文章を通常の雑誌に堂々と書くことは、以前ではあまり見られなかったことではないでしょうか?(そうでもないのかな?)
ましてやBMW Magazineという極めて資本主義的な雑誌にですよ(笑)
昔なら資本主義者が目くじら立てて怒ったはずです。

僕は左翼思想の持ち主ではありませんが、バブルの時代に残業につぐ残業でボロボロになった後で、こういう不況の世の中がいつまでも続くような状況を体験すると、正直言って資本主義も限界を迎えているのではないか?という疑問を感じざるを得ません。

僕と同じくらいの年代の人の多くが、心の奥底でそう感じているのではないでしょうか?
BMW Magazineに限らず、僕ぐらいの世代を対象にした雑誌に目を通してみると、考え方がソフトで多少左に偏っているかな?と感じることが多いので、多分そういうことなのでしょう。

ま、だからと言って今さら共産主義でもないのですが、たとえば100年後の人類が、ガリガリ金儲けして、成功者は歓楽街で女の子をはべらせて夜な夜な飲みまくって生活している、なんて姿、想像しにくいですしね(笑)
きっと人類は変わりつつあるんですよ。僕も乗り遅れないようにしなきゃ(笑)



さて2冊目はドナルド・キーン著の「明治天皇を語る」です。
これはJ.W.さんからおもしろかったと勧められた本です。

本当になかなかおもしろい本でした。
ドナルド・キーン氏は、日本文学や日本文化の研究に造詣が深く、より詳しい「明治天皇(上下巻)」という本を出しています。
実はそちらの本は未読なのですが(笑)、こちらの「明治天皇を語る」の方は、氏が講演会で語った「言葉」をベースに編集されているので、全編を通じて実に読みやすい文章で統一されています。
僕の知的レベルで読める本の条件にピッタリですね(笑)

天皇というと何かと神格化されて、ましてや当時はまともに見ることさえ許されない存在だったので、どうしても「実像」というものが見えにくくなってしまいます。
特に明治天皇の場合は、天皇自身が直筆の書類などを一切残したがらなかった等の事情もあり、従者の記録や謁見した外国人の感想などから想像するしかなく、実像はベールに包まれています。
しかし大正天皇とは違って立派な人物であったという漠然とした認識は、私たちの間でも語り継がれていますね。

キーンは残された文献を調べ上げることで、明治天皇の人間的な側面を掘り下げていきます。
それがとてもおもしろい!
明治天皇が持っていた当時としては驚異的な「優しさ」や、興味の対象、人間的な癖、失敗と後悔・・・そういったものがだんだんと明らかになっていきます。
そして最終的に明治天皇は「当時の皇帝の中で世界一の存在だったのではないか」という絶賛に近い結論に至ります。

薄くて気楽に読める本なので、皆さんもいかがですか?


ところで皇室で思い出した話があります。
僕の時々行く床屋の叔父さんの話です。
その方は若い頃、侍従長の行きつけの床屋さんで修行していました。

ある日、侍従長の散髪をしていた時、何か気の効いたことを言わなければと思い、
「お嬢様はとてもお綺麗な方ですね」
と話しかけました。
当人にしてみれば精一杯の言葉だったのですが、侍従長から
「失礼な!」
と怒られてしまったのです。

「お嬢様というのは下々の者に対する言葉である。皇室関係者に関しては「おひいさま」と言わなくてはならない」
と教えていただき、いたく感心した(と言うか目を白黒させた)のだそうです。