☆ 現代のホルスター ☆
ビアンキのポリス用ホルスター。ポリス用のリグは、黒く染められており、より早く抜くための工夫がなされていた。このホルスターの表面は、バスケット・ウェイブのスタンプ仕上げになっている。
ビアンキ#1873
形の上では「
メキシカン・ループ」だが、かなり現代的にリファインされている。
ビアンキ#1860
作りはビアンキ流だが、形はまあまあオーセンティックだ。
新しいジョン・ビアンキの会社フロンティア・ガンレザーのホルスター。形は相変わらず。作った職人の認定証が付く。
ビアンキ#1890
バスカデロ」パターンの現行ホルスター。メタル・ライニングではない。ベルトとホルスター部を組合せる。出来はイマイチだが、昔から日本のガンショップの広告に写真が出ていたので、欲しがっている人が意外に多いと聞く。
カナダのボブ・マーニックルの早撃ち競技用ガンベルト。当時ははじめて日本人に売ると言っていた。
アーニー・ヒルの早撃ち競技用ガンベルト。かなり特異な形に発展している。アーニー・ヒル当人が昔から有名な早撃ちガンマンだ。
より早く抜くために様々な努力がなされてきた。それはメーカー不明のこの特異な形状のリグを見ても明らかだ。
アンマークドだが、アンダーソンのサンダーボルトと思われるリグ。コルト・45オートを使用したコンバット・シューティングが盛んな頃のマッチ用リグだ。ホルスター先端部のプラグは、縫いこむのに20時間もかかるという。

 銃社会アメリカの国民は、決して銃を離そうとしません。
 彼らには、「自らを銃によって危険から守ってきた」歴史があるので、たとえ他の国々から批判を受けても、銃を離す気は無いのかもしれません。
 そして銃の歴史とともにホルスターの歴史があります。現代でも、銃が存在する以上、ホルスターの需要は無くならないようです。

 早撃ちの世界は、1960年頃、異常なほどのブームとなりましたが、現在はかなり下火の模様で、各地で細々としか続けられていません。
 早撃ちは、タイムを測定する純粋な「競技」であり、スポーツの一種です。そのため厳格なルールが作られました。ファースト・ドロウ用のリグは、ルールの解釈の許す限りのことは何でもする、という態度を取ったため、競争の一途をたどり、本来のガンレザーとは、かけ離れたものへと発展していきました。
 ファースト・ドロウは、百分の一秒で勝敗が決まる「世界一早いスポーツ」と呼ばれているのです。
 銃も、コルトのSAA(又は外国製のレプリカ)をベースに、様々なチューニングが施されましたが、一方でコルトのオートマチック・ピストルをベースとする新しい流れも現れ、コンバット・シューティングのような様々な射撃競技に発展していきました。
 早撃ち競技用のリグでは、アーニー・ヒルやテッド・ブロッカー、最近ではカナダのボブ・マーニックルなどが有名です。彼らのリグを愛用する早撃ちパフォーマーたちも当然いるのですが、ここではガンベルトの写真をいくつか紹介するのみに止まりましょう。
 一方で、民間のホルスターは、どのような発展をとげたのでしょうか。
 ハイザーのホルスターは姿を消しましたが、いくつかのホルスター・メーカーが、新たに誕生しました。ホルスターの形も、より近代的なデザインへと発展しました。
 その中でもっとも大きいのがビアンキ社です。

 ビアンキ社を作ったジョン・ビアンキは、「現代ホルスターの父」と言われています。
 ビアンキ社のラインナップは非常に豊富で、品質も高く、カタログを見ているだけで欲しくなる製品ばかりです。
 私も子供の頃、お店のショーウィンドウに飾ってあったビアンキの製品を見ては、「高嶺の花」の高額な値段に、ため息をついていました。(後年、その事をビアンキ氏に話したら、大変喜んでいました。)
 ビアンキ社の製品の多くは、収納する銃の形に合わせて、水分で立体的に整形されており、適合する銃の専用品として作られています。
 普段はストラップなどで、銃が固定されており、不用意に落下しないようになっていますが、いざという時、銃のグリップをつかみながら、親指でホックを外せるようになっているモデルもあります。
 また、ビアンキの競技用ホルスターは、オールド・ウエスト時代の「カリフォルニア」パターンのホルスターと同じように、引っ張ればすぐに銃が抜けるように、半分剥き出しの状態で銃を保持します。ただし、本来革が持つ弾力性を利用したり、金属製のスプリングを縫いこんだりして、銃を強く挟み込んで保持します。
 「強く」といっても、銃は鉄の塊ですから、柔らかい革に「強く」保持されても痛くも痒くも無いのですが、プラスチック製のモデルガンの場合は、そうはいきません。特にコルト・ガバメントのトイガンの場合は、実物より2ミリほど厚く作られているモデルガンが多いので、ホルスターに無理に突っ込んで、傷付けないように注意が必要です。
 かつてビアンキ社は、ウエスタン・ガンレザーの範疇に入る製品を、何度か作ったことがあります。
 写真のモデル「1873」や、騎兵隊のセットを真似た「1860」等です。また「
バスカデロ」パターンの「1880」等は、立派な現行品です。 しかし、ビアンキ流の現代的なリファインがなされているため、あまり評判は芳しくありません。
 ジョン・ビアンキは、会社を後継に譲りましたが、自らは引退するどころか、「ジョン・ビアンキズ・フロンティア・ガンレザー」というウエスタン・ガンベルト専門の会社を作り、特注品のガンベルトを製造しています。ビアンキ氏自らウエスタン・ハットにガンベルトのいでたちで、カタログを飾っています。またガンベルトの作成ビデオ(全3巻)などを出し、その中で嬉々として、革の裁断や縫製をこなしています。根っから革工作が好きなのですね。
 最近では、より早く銃が抜けるように、ホルスターの前部に大きな切れ込みの入ったモデルや、耐久性を考えて、思い切って材料の革を捨てた、ナイロン製の製品などもあります。私は、ナイロン製のホルスターが好きではないのですが、銃のグリップも、木製ではなく、ラバー製のものが多くなり、アメリカ人の「趣味」より「実用性」を取る感覚には驚かされます。
 ビアンキの作るガンベルトのデザインは、どうしてもビアンキ流の現代的なラインが入り、オーセンティックなものとは言えません。専門家の中には「破壊者」と批判的に呼ぶ人もいるようです。
 しかし、彼の情熱のこもった作品を見ていると、彼の目指しているのは、古いホルスター・デザインの再現ではなく、むしろ「現代のボーリンになる事」ではないかと思えてきます。