早撃ち御三家の時代B
☆ アンディ・アンダーソン ☆
日本のU.S.キャバルリーで作ってもらった、アンダーソンの「ウォーク・アンド・ドロー スタンダード」の複製。エクストラ・チャージを払い、特別に良い革を使ってもらった。
アンマークドだが、細部からアンダーソンの「ウォーク・アンド・ドロー ウエスタン」であろうと判断できる。映画のプロップとして使われたものと思われる。
アンダーソンはバックルひとつにも凝っていた。写真はアンダーソンのリグにはもっともポピュラーなノース&ジャッド社の物にたがねで傷をつけて装飾したもの。
こちらはアンダーソンが力を入れていた銀細工のバックルを日本のL.A.トップガンアートが再現したものだ。
奴らを高く吊るせ!」のイーストウッド。黒づくめのスマートな服装をバックに、アンダーソンのリグの美しさも際立っている。
 アンディ・アンダーソンは、3人の中でもっとも神格化されており、信仰者の多い人物です。
 彼は、射撃の腕前も相当の物で、何度か競技に参加していい成績をあげています。子供の頃から野兎を撃つのが趣味で、銃に親しんでいたからでしょう。
 彼のリグのデザイン的な特徴は、何よりスマートで美しいことです。現在でも、彼のことを神様のように思っている人が多い理由のひとつでしょう。
 彼は、戦争で右腕に負傷したことがあり、自分自身が銃を撃ちやすいようにホルスターを改造しました。彼は、ガンベルトのホルスター部分を、前方に傾斜させ、銃口を前方に向けた状態で銃を保持し、腕をひねらずに、自然に無理なく抜けるようにしました。
 これは、早撃ちの世界では、画期的で革命的な発明と言われています。 
 彼の発明は他にもいっぱいあります。ガンベルトが腰にスムースにフィットするように、ベルト部分全体が大きく弧を描いた「コンテュアー・ベルト」も彼の発明と言われていますし、メタル・ライニングも、最初は彼が考え出したと言う人もいます。

 また彼のリグは、映画スターの中でも、クリント・イーストウッドやスティーブ・マックィーンといった銃の「うるさ型」に愛用され、そのことも彼の評価を高める一因になっています。 
 彼のガンベルトは、「ガンファイター・リグ」と呼ばれ、愛用者の中には、早撃ちの天才と謳われたセル・リードが含まれます。子供の頃のセル・リードは、当初アルボのところに行ったようですが、どうも相手にされなかったらしく、そのままアンダーソンの方に出入りするようになったそうです。
 セル・リードは早撃ちの天才で、子供の頃から次々に記録を塗り替えて、新記録をマークしていった為、マーク・リードという異名を持っています。まだ小さい頃のセル・リードに、ガンベルトを付けてやる、若いアンダーソンの写真が残されています。
 セル・リードの伝説的な早撃ちをビデオで見てみると、身体は直立不動で、ほとんど動かないのに、両手が銃をバッとつかみ、すごい早業で銃口を標的に向けて発射するのがわかります。実弾での射撃をする人は、ブランクでの早撃ちガンマンのように、身体をのけぞらせないのかと、感心して見ました。彼が二丁の拳銃を同時に発射すると、離れたところにある標的に、彼の両方の腕と同じ間隔で二つの穴が開いたそうです。
 セル・リードは、一時話題にのぼらなくなり、どうしているのかと思われましたが、最近映画の「
クイック・アンド・デッド」や「トゥームストン」などで、インストラクターをつとめ、復活しつつあるようです。
 クリント・イーストウッドのガンベルトは、一連のマカロニ・ウエスタンで、私たちの目にとまりました。当時は、あの独特の模様が入ったガンベルトに憧れたものです。あれは、アンダーソンがガンファイター・ステッチと呼んだ装飾模様で、ベルトの強度を増すのに役立ちました。
 クリント・イーストウッドのリグは、アンダーソンの「ウォーク・アンド・ドロー」の「ウエスタン」というモデルを基に、ホルスターの前方への傾斜を少なくし、ほぼ真下へ吊り下げるよう、イーストウッド用に改造したものです。こうすることで、早撃ちのスピードは少し遅くなりますが、代わりにガンプレイがやりやすくなります。
 ちなみにイーストウッドの腰のサイズは、44.5インチだったということで、身体が非常に大きいことがわかります。ガンファイター・ステッチを施したリグは、腰のサイズが40インチ以上無いと、ホルスター部分より前に来るステッチの数が中途半端で恰好悪いといいます。 
 彼の携わったスターたちは、すごいラインナップで、イーストウッドは「ローハイド」時代から彼のリグを離さなかったようですが、他にもジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダ、チャールズ・ブロンソンといった、そうそうたる名前が並びます。また、一連のマカロニ・ウエスタン製作の時は、セルジオ・レオーネ監督が、自らアンダーソンに会いにローマから渡米し、大量に注文したそうです。アンダーソン自身は、数多くの映画スターたちにコーチをしましたが、その中で一番優秀な生徒だったのは、意外にも女性のラクェル・ウェルチだったと言っています。 
 アンダーソンのモデルでは、「ウォーク・アンド・ドロー」の「ウエスタン」が有名ですが、それ以外にも、マックィーンが「荒野の七人」で使った、「ウォーク・アンド・ドロー」の「スタンダード」モデルや、セル・リードが愛用した「バスカデロ」パターンの「ビクトリー」などが有名です。
 また、より早く銃を抜く為に、腰の高い位置に銃を持ってきた「A.A」も愛用者が多いようです。このモデルは、当時ビキニ姿の女性に装着させて宣伝するというショッキングな方法がとられ、「ビキニ」という愛称を持っています。
 私は、腕が長いことがあり、ハイ・ライドの「A.A」は、ちょっと苦手です。
 一方アンダーソンの施したカービングは、とても素晴らしいもので、ベルトのバックルも銀製のセンスのいいものを作り、銃のグリップも銀製のガラガラヘビがインレイされた、イーストウッドが愛用するモデルを作るなど、関連する分野でも、その才能をいかんなく発揮しました。

 アンダーソンは、1991年に亡くなりました。彼の仕事を正式に継承する者は、ついに現れませんでした。継承することが許されなかった、と言う方が正しいのかもしれません。
 しかし、彼の信仰者は世界中に存在し、今でもアンダーソンのモデルを複製する職人は、大勢います。またガンベルトのお店にも、「あのイーストウッドのしているやつ」と言ってくるお客さんが、一番多いそうです。 
クリント・イーストウッド・モデルと同等のラフアウト仕上げのアンダーソンのリグ。グリップはL.A.トップガンアート製のレプリカ。それに有名なポンチョと、イーストウッド・コスプレ3点セットだ。
子供の頃のセル・リードに、親切にガンベルトの説明をする若い頃のアンダーソン。
アンダーソンのモデル「A.A」は、水着女性の写真を広告に使用したところから「ビキニ」の愛称を持つ。
半裸でアンダーソンのリグを装着する、ラクェル・ウェルチのセクシーなショット。アンダーソンのリグの繊細なデザインは、女性にもよく似合う。