早撃ち御三家の時代@
☆ アルボ・オジャラ ☆
アルボ・オジャラ著「早撃ちの秘密」。リステリンの提携で出版された。様々なガンプレイの分解写真が載っており、早撃ちに関連した本に影響を与えた。
アルボ・オジャラのカービング・リグのひとつ。全面にスィベル・ナイフで特殊な模様が刻まれている。このようにガンベルトはひとつひとつ特注に近い形で作られたようだ。
アルボ・オジャラのNo.1(左)と早撃ち用に角度をつけたNo.1−25(右)。ホルスター部にはメタルが挿入されている。
 1950年代頃になると、映画産業も落ち着きを見せ出し、ただ派手ならいい…という時代ではなくなりました。映画俳優たちも、「元はプロのカウボーイだった」という人たちがいなくなり、もっぱら演技の専門家に変っていきました。西部劇というジャンルも、古きよき時代を舞台とした歴史劇となり、映画で使われるガンベルトも、ただ派手なだけの装備から、ドラマで使われる地味で重要なアイテムへと変身をとげました。
 この時代、ガンベルトの製造者として有名な人物が3人います。TVや映画用のガンベルトを中心に活躍したアルボ・オジャラ、早撃ち競技用のリグに情熱を注いだアルフォンソー・ピネダ、カービングのマスターで射撃の腕も確かだったアンディ・アンダーソンです。彼らは、今の日本のウエスタン・ファンが親しみやすい時代を中心に活躍している為、彼らの携わった作品や人物を見ていると、聞いたことのある名前がたくさん出てきます。
 アルボ・オジャラは、当初、リンゴの農園を営んでいました。多分彼は自分の農園で、ガラガラヘビなんかを相手に、銃の腕を磨いていったのでしょう。
 やがて革職人へと転身した彼は、ノース・ハリウッドに店を構えるようになり、映画やテレビの産業と深い関わりを持つようになります。
 彼はスターたちのガンベルトを製造すると同時に、早撃ちやガンプレイのインストラクターもつとめました。
 
 1950年代から60年代にかけて、西部劇の大ブームがありました。ブームは、1テンポ遅れて日本にも飛び火し、1週間に20本以上の西部劇が放映されるほど、多くの作品が作られていました。
 当時高校生だった私の叔母などは、西部劇の大ファンで、女性ながらも自分のガンベルトを持っていて、当たり前のようにガンプレイをやりましたし、TVスターが来日した時は、夜中に羽田に見に行ったそうです。
 この当時のTVスターの多くが、アルボ・オジャラの弟子に当ります。特にワーナー・ブラザースの製作したTVウエスタンの登場人物の多く(ロック・ハドソン、ジョン・ラッセル、ワード・プレストン等)が彼の弟子です。
 映画では有名なところでは、「帰らざる河」のマリリン・モンローに、彼がコーチをしている写真が残されています。

 彼は、「早撃ちの秘密(ザ・シークレット・オブ・ザ・ファースト・ドロウ)」という小冊子を作り、自分の様々なガンプレイを、連続した分解写真で詳しく解説しました。彼の名前は、遠く離れた日本へまでも轟き渡り、「アルボ・オジャラという、ガン・コーチがいるらしい・・・」とウエスタン・ファンの間で話題になるほどでした。

 TVの「ガンスモーク」のオープニング・シーンで、マット・ディロンに撃たれる役は、アルボ本人が演じているといいます。しかしアルボの方が抜くのが早かった為、何回も撮り直したそうです。
 比較的最近の作品では、「バック・トゥ・ザ・フューチャー3」や「スリー・アミーゴス」などで、彼の名を見ることができます。また「シルバラード」のメイキング・ビデオでは、ケビン・クラインにガン・コーチをする、年老いた彼の姿を見ることができます。
 彼の持つ特許で、早撃ちの歴史上、非常に重要なものがあります。それは、「メタル・ライニング」と呼ばれるもので、金属製の板を、ガンベルトのホルスター部分の内部、革と革の間の見えない部分に挿入する技術です。
 これによって、ホルスター部分の革の強度が大幅に増して、ホルスターの内側の革が銃のシリンダーにまとわり付かず、シリンダーが常に浮いている状態になります。その結果、早撃ちの一瞬、銃をまだホルスターから完全に出し切る前に、撃鉄(ハンマー)を起こし始める事が可能になります。つまり、銃がまだホルスターの中にあるうちに、シリンダーが回り出すのです。結果として早撃ちのスピードアップにつながるわけです。リボルバーは、撃鉄(ハンマー)を起こしてシリンダーを回転させる時に、シリンダーを軽く手で押さえただけで、回すことが不可能になってしまうのです。
 早撃ち用のガンベルトは、「メタル・ライニング」であるかどうかで、機能的にも価値的にも大きな差が出ることになります。
 アルボ・オジャラのリグは、TVでよく使われたスタイルの「No.1」や、早撃ち用に前方に傾斜した「No.1−25」等が有名です。「No.1」の形は、私たちが頭に思い浮かべる「ガンベルト」そのものです。
 アルボ・オジャラは、かつて自分が作り上げたガンベルトのスタイルを、頑固に崩そうとしません。実際の製品は、オレゴン州に住む息子のエリック・オジャラが作っているようですが・・・
ずらりと揃った1950年代後半のTVウエスタンのスター達。すべてアルボ・オジャラの弟子だ。ピーター・ブラウンのズボンには早撃ちに失敗し暴発した後が残っているのが可笑しい。
帰らざる河」でモンローに指導するアルボ・オジャラ。まさに人生最良の栄光の時であったことだろう。