☆ エドワード・H・ボーリンの時代 ☆
エドワード・H・ボーリン製の1919ウォーク&ドロウ・リグ。初代のものではなく、早撃ち全盛の頃に作られた製品だ。
 民間のホルスターで、ハーマン・H・ハイザーが躍進した頃、新しくできた映画産業に携わることで、成功したメーカーがあります。
 それがエドワード・H・ボーリンです。

 ボーリンは、ワーキング・カウボーイとして、有名なバッファロー・ビル・コディのランチで働いていましたが、その間に馬具の店を持つようになり、やがて1923年頃ハリウッドに進出しました。
 当時、映画産業は、まったく新しい分野でした。
 西部劇映画として、世界で最初に作られた作品は、1903年の「大列車強盗」という作品でした。現在でも、映画「トゥームストン」の冒頭部分で、一部観ることができます。
 ダイナミックな西部の世界は、映画の舞台としてなかなか好都合であると、当初から思われていたのかもしれません。映画は1900年に実際に起こった列車強盗をモデルとしていました。
 驚くべき事に、その当時の人々にとって、西部劇は決して過去の話ではなく、言い換えれば現代劇であったとも言えるのです。
 映画スターたちにとっては、自分が、脇役の役者より目立つことが何より大事でした。映画は新しい産業として急速に発展しましたが、この時点では、まだ時代考証を持ち込むことなどほとんど考えませんでした。何しろ半分現代劇なのですから、当たり前かもしれませんね。むしろ、より目立つ為には、誰も見たことのないような最新の物を、使おうとしていたのです。
 彼らは、ボーリンに依頼して、人目を引く、派手なカービングを施したガンベルトを作ってもらいました。やがて、装飾はエスカレートしていき、銀細工のコンチョを散りばめた、派手なサドルや、ガンレザーが作られました。
 こうして、現代のウエスタン・ファッションの原点とも言える、「人より目立つ派手な恰好」が生まれていったのです。
 1900年代の初め頃から、「バスカデロ」パターンと呼ばれる、新しいガンベルトの形が登場します。
 「バスカデロ」パターンは、ベルトの途中に切れ込みを入れ、そこにホルスターを通して吊り下げた形式で、その後現代まで、ガンベルトの形式の主流となるものです。
 ベルト上をホルスターが移動できることは、本来重要なことでしたが、「バスカデロ」パターンでは、ホルスターが一ヶ所に固定されてしまいます。しかし、映画のために作られたガンレザーに、実用性など求められなかったのです。
 ホルスターが固定されて、簡単にははずせないので、必然的にホルスターとベルトはセットになり、「ガン・リグ」などとも呼ばれるようになりました。(リグは装備の意味) 
 ボーリンのガンベルトは、当初は「メキシカン・ループ」が主流でしたが、後には「バスカデロ」が多くなっていきます。
 現在では、初代代ボーリンのガンベルトは非常に高価で、自動車が一台買えてしまうような金額で取引されます。もっともその値段の大半は、スターリング・シルバー製の、手で彫刻されたコンチョの値段です。一個が万の単位で取引されるコンチョが、時にはベースとなる革の部分が見えないほど、数百個もぎっしりと付いているのですから、当然の話です。 

 ボーリンの顧客リストには、当然のように、キラ星のような西部劇スターたちが並びます。トム・ミックス、バック・ジョーンズ、ジーン・オートリー、ロイ・ロジャース…TVの「ローン・レンジャー」の派手なガンベルトも彼の作品です。
 彼の会社は、「サドル・メーカー・トゥー・ザ・スターズ」と呼ばれました。
 ボーリンの「人に見せる為の装備」は、もはや本来の実用性を持ったカウボーイ・グッズとは別の物でした。銀細工の散りばめられた彼の馬具は、非常に目立ち、ウエスタンの恰好で人前に立つパレードの時に好都合でした。それらは、ガンベルトや手袋、チャップス、スパー・ストラップ等と合せて、「パレード・リグ」と呼ばれています。

 会社としてのエドワード・H・ボーリンは、現在でもウエスタンの装飾品のスーパー・ブランドとして君臨しており、高価な製品は憧れの対象ですが、過去に何度か身売りされており、現在はボーリン自身とは関係ありません。
 ボーリンは、1980年まで存命していました。しかし彼自身が関与したホルスターは、1940年代くらいまででしょう。

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ジーン・オートリー博物館に展示されているボーリンのど派手なパレード・サドル。数百万円の値段がつくが、全面にびっしりと取り付けられた銀製のコンチョの価格が占める割合が多い。
R.T.フレイザーの「メキシカン・ループ」パターン・ホルスターだが、形は「メキシカン・ループ」の最終形に近づきつつある。同じ頃新しい「バスカデロ」パターンが登場する。
エドワード・H・ボーリンのロイ・ロジャース・ベルト。1個が万の単位で取引されるスターリング・シルバーのコンチョがびっしり付いているのだから、いくらになるか想像がつこうというものだ。やっとの思いで買った。でも恥ずかしくて、して歩けない。