☆ ハーマン・H・ハイザーの時代 ☆
 西部劇の舞台となった時代は、主に1870年頃から1890年くらいまでで、非常に短い期間だったといいます。1900年代に入ると、自動車の登場により、馬で移動する時代は、終わりを告げようとしていました。
 当然馬具の需要も減り、多くの馬具メーカーの経営状態は、「風前の灯火」となりました。いくつかのメーカーは、町を転々とし、経営者も入替わり、それでもやがては消えていきました。
 そんな中、コロラド州デンバーに本拠を置く、ハーマン・H・ハイザーは、「ガンレザー」を「馬の鞍」とは別の、スポーティング・グッズの一種として捕らえました。カタログも鞍とは別に用意し、全国的な通信販売の網を整備することで、この厳しい時代に生き残ったのです。
 ハイザーは、「ガンレザー」を独立した製品として捕らえた、最初のメーカーと言われています。もちろんハイザーは、その一方で馬具も作り続けました。  
 ハイザーのホルスターは、高品質を保ちながらも大量に生産され、豊富なラインナップを誇り、全国のユーザーに供給されました。また他の通販のメーカーへのOEM生産も引き受けました。製品群は非常に豊富で、写真のように様々な製品が用意されました。
 多くは「
メキシカン・ループ」パターンのデザインを継承していますが、形はより現代的にリファインされており、ストラップ付のモデルもあります。縫い目の最後には、糸がほどけないように鋲が打たれ、モデルに応じて使用する革の質を変えることで、モデル間の差を付けました。また仕上げにも、好みに応じて、なかなか彫りの深いカービングを施したものが用意されています。そして製品には、ハーマン・H・ハイザーのトレード・マークである、「3つのH」の刻印が押されました。 

 ハイザーの製品は、大量にばらまかれた為、アメリカ全土に存在し、その品質の高さにもかかわらず、現在あまり高価な取引はされていません。その為、コレクションの対象としては手ごろです。
 ハイザー社は、1950年にキーストン社に吸収され、その歴史を終えました。
 

 ハイザーと同時期に繁栄したメーカーとして、S.D.マイレス社と、ジョージ・ローレンス社が挙げられます。この三者をして、この時代の御三家と呼ぶことができるでしょう。

 テキサス州エル・パソのS.D.マイレスは、パットン将軍が愛用したホルスターを作っていたことで有名です。
 またマイレスは、独自にクイック・ドロウ・ホルスターを開発し、多くの法の機関やFBIなどにも愛用されました。
 S.D.マイレス社は、マイレスが1953年に亡くなるまで続きました。

 一方オレゴン州ポートランドのジョージ・ローレンスは、1800年代から馬具を作り続け、つい最近の1980年代まで会社は続いていました。
 ローレンスのホルスターは、映画「真昼の決闘」でゲーリー・クーパーが使ったことで有名です。
ハイザーの馬具カタログ(1925年発行・左)とホルスター等を載せたスポーティング・グッズ・カタログ(右)。カタログはいくつか持っているが、ラインナップはそれほど変化していない。ただし物価に合わせて価格は年々上昇していく。
ハイザーのNo.2710。ニッケルめっきのスポットと全面に施されたカービングは、実用と言うより、見せるためのホルスターと言った方がいいだろう。
左からハイザーNo.552,型番不明、No.752。中央のホルスターのようなストラップ付きの物も多い。

手前は型番不明、奥はNo.410。
使用する革の厚みで、製品のグレードを分けてある。

アンマークドだが、明らかにハイザーの製品である。米国中に通販の網がはりめぐらされ、商売が大きくなると同時に、他社へのOEM供給も行われた。
私の好きなハイザーNo.407。当初ブルズ・ヘッドの異名を持っていたが、右側のサンプルには肝心の牛の刻印がない。手持ちのカタログでもNo.30以降は、牛の刻印が無くなっている。スタンプがすり減ってしまったのだろうか?

ハイザーNo.738。このようなフラップ付きのモデルも多く作られた。上部の鋲を中心に角度が自由に変えられる。

ハイザーNo.412。
3ループ・ホルスターの種類も多い。
型番不明のハイザー・リグ。派手なカービングと2列のカートリッジ・ループ。映画用に使われたのではないか、という話だった。ホルスターの形はNo.719と思われ、ハイザーの代表的なデザインである。
S.D.マイレスのカービングを施したホルスター。コルトのオートマチック用だ。

マイレスのホルスターはこの手の明るい色の革を使っている物が多い。
これはマイレスのボーダー・パトロール・ホルスター。パットン将軍が使っていた物と同じだと思われる。今でもエルパソ・サドルリーが後を継いで作っている。
ジョージ・ローレンスの「テキサス・ジョックストラップ」パターン・ホルスター。コルト・オートマチック用であるところが、比較的新しい製品であることを物語っている。
S.D.マイレス社のカタログ(左)とジョージ・ローレンス社のカタログ(右)。ホルスターやサドルをはじめ革製品が満載されている。
S.D.マイレスのトム・スリーパーソンズ・ホルスター。より早く抜くために、銃のトリガー・ガードが露出している。