☆ その他のホルスター@ ☆
 当初は「テキサス」パターンと呼ばれる、袋状のショルダー・ホルスターが多く使われました。腰に付けるホルスターを、そのままわきの下に移動したような形でした。
 左のわきの下に手を伸ばせば、銃のグリップがこちらを向いてそこにある。普段は隠し持っていて、いざという時は、すぐに抜けるので便利です。しかし、ホルスター部分から銃を抜き取る時に、斜め上の方に向けて引っ張らなければなりません。普通はそれで十分な気がしますが、そこは競争の激しい西部の事、より早い方法はないか、様々な知恵が絞り出されました。
  腰に付けるホルスターでは、「ブリッジ・ポート」リグと呼ばれる、実験的なホルスターがあります。
 これは銃の撃鉄(ハンマー)を止めているスクリュー、要するにネジを延長し、金属製の突起を出し、ベルト側にリベットで固定した金属製の板ばねに引っ掛けて固定するものです。
 つまり、銃を事実上裸で腰に下げるわけです。銃を腰に付けたまま回転させて、銃口を相手に向けることもできますし、銃を取り外す時は、そのまま前方に押してやると、板ばねから外れて、銃がフリーになる仕掛けです。
 いかに早く抜けるかを競う内に、ここまで来てしまった、という感じです。
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ブリッジ・ポート」リグは、銃本体までも、ホルスターの一部として考えて作られているのです。
 この方式の特許は、ルイス・フラタウという人が、1882年にとっています。軍にも、試験的に500個ほど納入したようですが、結局むき出しの銃を腰に付けて運ぶのは、いくら何でも「危険である」し、その上裸では「銃が汚れる」という理由で、採用は却下されました。まさに過渡期の製品という感じですね。 
 この「ブリッジ・ポート」リグは、数が非常に少ない為に、たいへんな高値で取引されています。あのジーン・オートリー博物館でさえ、複製品しか置いてありませんでした。
 現在スチュアート・サドルリーやマリオ・ハネル等のメーカーが「ブリッジ・ポート」リグの複製品を作っていますが、それはすなわち金属部品が簡単に手に入ることを意味し、ニセ物も多く出回っていることになります。
 その意味でも大変「危険」なアイテムであると言えましょう。
 銃は往々にしてトラブルの原因となりました。そのため、町によっては銃の持ち込みを禁止するところも出てきました。町の入り口で、保安官から銃を取り上げられるシーンは、西部劇でもおなじみです。
 しかしカウボーイやギャンブラーたちには、銃は必需品でした。銃を渡してしまって、丸腰になることは、彼らにしてみれば、時には「死」を意味したのです。
 そこで彼らは銃を隠して持とうと考えました。その結果、ショルダー・ホルスターが発展していったのです。利き腕と反対側のわきの下に銃を保持し、上から背広やマント等を羽織れば、外からは見えません。
 私は、どうもショルダー・ホルスターは、あまり好きではありません。何だか肩が凝りそうな感じを受けるのです。
 その結果、裸の銃のシリンダー部分を、金属ばねの固定具ではさんで持ち運ぶ、「スケルトン」パターンと呼ばれるショルダー・ホルスターが開発されました。この方式だと、銃をまっすぐ手前に引っ張っても、すぐに抜くことができます。
 マイルズ・シティ・サドルリィの製品が有名ですが、他にも多くの会社が製造したようで、あのミーニーまで作っていたようです。
 「スケルトン」パターンのショルダー・ホルスターは、アンティークの世界では、今でもよく見かけます。意外に多く出回っていたのかもしれません。
 このように、より早く抜けることを目指すと、どうしても銃の露出度が多くなります。
テキサス」パターンのショルダー・ホルスター。銃を隠し持つための不穏なアイテムである。
銃をスプリングではさんで保持する「スケルトン」パターン・ショルダー・ホルスター。むき出しの拳銃をわきの下に隠すという特異なスタイルは、過渡期の製品という感じがする。
私は実物の「ブリッジ・ポート」リグを持っていない。これは、スチュワート・サドルリー製の複製品である。「マネー・カートリッジ・ベルト」に金具がリベットで留めてある。そこに裸の銃を引っ掛けるわけだ。
ジーン・オートリー博物館でさえ、複製品の「ブリッジ・ポート」リグしか置いていなかった。稀にオークションなどに出品されるが、それが本物である保証はなく、結局値段がつけられないことも多い。
ハーマン・H・ハイザーのNo.125ショルダー・ホルスター。1930年頃。この頃になると、現代のショルダー・ホルスターと構造的にそう変らない。