☆ マネー・カートリッジ・ベルト ☆
1860年代、銃器の世界に革命的な発明がありました。
 金属薬莢、すなわちメタリック・カートリッジの発明です。
 火薬を密閉された銃弾、これによって銃の信頼性は大幅にあがると同時に、弾の装填にかかる時間も、劇的に短縮されました。
 メタリック・カートリッジの発明は、銃ばかりでなく、「ガンレザー」の世界にも多大の影響をもたらしました。弾の装填が容易になった分、常に大量のカートリッジを持ち運ぶことが求められたのです。
 すぐに、ベルトの表面に、革製の小さなループをたくさん作り、そこにカートリッジを入れて持ち運ぶ、「カートリッジ・ベルト」というベルトが作られました。革製のループは、弾丸の口径に応じて大きさが決められ、より多くの弾丸を持ち運べるように、ベルトの幅を広くして、上下二列付けられることもありました。

 さらに、このベルトの本体そのものを、二枚縫い合せる、または折り曲げて袋状にして、その中にお金等の重要なものを入れる「マネー・カートリッジ・ベルト」も開発されました。
 カウボーイ達は、彼らにとってお金と同様に大切なものであった、馬の権利書も入れていたそうです。
 「
マネー・カートリッジ・ベルト」は、中に入っている大切なものを盗る気なら、その前に俺の命を奪ってみろ、という「凄み」を感じさせます。

 南北戦争(1861〜1865)の時代に、すでに金属薬莢は存在し、一部に使用され重宝がられたようですが、金属薬莢を装填する為に必要な貫通輪胴の特許を、銃器メーカーのS&W(スミス・アンド・ウェッソン)社が独占しており、他のメーカーは、指をくわえて見ているしかありませんでした。しかし、当時のS&W社には、技術的に口径の小さな弾丸しか製造できなかった事もあり、一般にはあまり普及しませんでした。
 やがて1873年にコルト社が、金属薬莢を使用する銃の決定版とも言える45口径のシングル・アクション・アーミー、いわゆる「
ピースメーカー」を発売し、「西部を征服した銃」と言われるほどの大ヒットを記録するまで、民間への普及は時間がかかりました。
 したがって「
マネー・カートリッジ・ベルト」の時代を確定する場合は、1870年代以降と判断して、ほぼ間違いありません。

 

 また「マネー・カートリッジ・ベルト」は、二つ折りにして縫いあわせた物が多い為、「カートリッジ・ベルト」と比べると、倍の面積の材料を使用します。そのため金額もほぼ倍になってしまいます。
 ベルト部分には、柔らかくて曲がりやすい、シボ入りの子牛の革が使われる事も多かったようです。

マネー・カートリッジ・ベルト」は内部が空洞になっていて、このようにコインを入れておく事ができた。バックル付近に入り口がある事が多い。写真のコインは1881年製の1ドル銀貨。
カートリッジ・ベルト」の一例。ループの大きさで口径がほぼ特定できる。
各種「カートリッジ・ベルト」と「マネー・カートリッジ・ベルト」。上からジョージ・ローレンス、R.T.フレイザー、ハーマン・H・ハイザー、メーカー不明。口径に応じ、ループの大きさが違う。