☆ ふたつのオールド・ウエスト @ ☆
リチャード・ラッテンベリー著「パッキング・アイアン」。ガンレザーのみを対象として書かれたはじめての本だ。
 日本に住んでいると、アメリカに関する情報は、もっぱらハリウッド映画から得るしかありませんでした。何しろ1ドル360円もしたのですから、アメリカは本当に遠い国でした。
 その割に、遠く離れたアメリカの国で、百年前の人々がどんな生活をしていたのか、意外に誰でもよく知っているのは、過去に何度か西部劇ブームがあったからです。

 私もご多分にもれず西部劇を原点として、この世界の魅力にとりつかれた者のひとりです。
 ガンマンが腰につけている重そうな拳銃、多くの人の目が、その「危険な鉄のカタマリ」に惹きつけられました。しかし私の目は、もっぱらガンベルトの方に釘付けになりました。もともと革製品が好きだったこともありますが、革の匂いがぷんぷんしそうな、その「おおげさな装備」に興味をひかれたのです。

 そのため、最初はもっぱら西部劇で使われたガンベルトに関する情報を集めていました。
 高校生の頃は、国産のガンベルトで早撃ちの練習もしました。モデルガンのピースメーカーが手になじんでくると、少しはガンマンに近づけたのではないかと喜びを感じたものです。
 しかし、やがて興味の対象は、本物の「オールド・ウエスト」へと移っていきました。西部の真実を知れば知るほど、それは映画とは無縁の世界だったのです。
 そのうちに、映画で使われたようなガンベルトでは、物足りなくなってきました。所詮は偽物でしかなかったからです。そして、アンティークとしての「ガンレザー」の世界に魅入られてしまいました。
 それは、紛れもなく大西部で使われた「本物」であったからです。
 アメリカでは、西部劇や早撃ちのような現代的なホルスターに興味のある人と、アンティークのホルスター等に興味を持つ人は、まったく別のタイプの人間です。
 私のように、両方を集めている人間は、珍しいと言えるでしょう。
 というのも、この二つの世界は、「相反するもの」とも言えるからです。

 オールド・ウエストのガンレザーにアンティーク的な価値が認められてきたのは、比較的最近のことです。どうしても、それに収まる「ガン」の方が、キャラクターが強いので、ガンレザーはいわば「おまけ」としての価値しかありませんでした。
 古いホルスターは、革がぼろぼろになり、鉄製のガンに比べて見劣りしたのも一因でしょう。
 アンティークのお店に、先祖の使っていたガンを持ち込んだ男が、ガンに数千ドルの値がつくと、ホルスターの方は「捨てておいてくれ」と言って置いていった・・・というのは、よく聞く話でした。 

 しかしリチャード・ラッテンベリー氏が、名著と言われる「パッキング・アイアン」(1993年)を執筆して以来、ガンレザーの価値は急激にあがりました。
 「
パッキング・アイアン」は、ガンレザーのみにスポットを当てた注目すべき本であり、この世界のバイブルと呼ぶにふさわしいものです。
 今でもガンレザーを売りに出す人は、「
パッキング・アイアン」の何ページに出ていたのと同じ物、などという表現をよく使います。それほど広く一般に認知された本なのです。
ゴファー・ブランドの「メキシカン・ループ」ホルスターとベルト。1800年代の本物の西部の男達が使ったガンリグである。
C.P.シップリー社の「メキシカン・ループ」パターン・ホルスター。1900年代初頭のものと思われる。
アルボ・オジャラのモデルNo.2。TVの「ハヴ・ガン・ビル・トラベル」のために作られたガンベルトのレプリカである。ルビーの目をインレイされたシルバー製の馬ののエンブレムが付く。米国内では有名なリグ。